AOヒートストレス・スケールHSSとは?全豪オープン2019の新熱中症対策

毎年のようにその暑さが問題となる全豪オープンでは、2019年から新しい基準に基づいたエクストリーム・ヒート・ポリシー(EHP、熱中症対策)が採用されることとなりました。新しい基準とは、全豪オープン・ヒートストレス・スケール(AO HSS)。

AOヒートストレス・スケールとは

AOヒートストレス・スケールは長いのでここからは、頭文字をとったHSSと書くことにしますね。

全豪オープン公式サイトが新しい熱中症対策を発表したツイート。


“全豪オープン・ヒートストレス・スケールに基づいたより広範な エクストリーム・ヒート・ポリシーが全豪オープン2019から導入されます。

HSSは、豪テニス協会とシドニー大学の熱人間工学ラボの共同研究により作られました。過去と現在の多くの選手からのフィードバックも考慮しました。

基準要因

HSSで基準とする気候要因は、4つ。

  • 気温、放射熱(太陽の強さ)、湿度、風速
climate factors

出典:ausopen.com

これらのデータは、会場内の5か所でリアルタイムに計測されます。

このほかに、熱人間工学の見地から、深部体温や発汗量などの熱ストレスのデータが考慮されます。

HSSは、昨年まで採用されていた豪州気象庁のWBGTよりもより正確で、多くのデーから判断することになるとしています。

5つのレベル

そして、HSSでは、誰にでもわかりやすいよう、5つのレベルが設けられます。

scale

出典:ausopen.com

レベル1が、問題なくテニスのできるレベルです。上の図では各レベルによって推奨される行動が書いてあります。各レベルのだいたいの意味は次の通り。

  1. ちょうどいい状態
  2. 水分補給を増やしましょう
  3. 体を冷やす対策が必要です
  4. 休憩
  5. 試合中止

というわけで問題となるのはレベル4からです。

レベル4で休憩

レベル4に達した場合、男子シングルスで、第3セットと第4セット間に10分の休憩が許されることになりました。

女子シングルスとジュニアでは、第2と第3セットの間にこれまでも休憩がありましたが、今回もレベル4に達した場合、同じく10分間の休憩が認められます。また、車いすシングルスでは15分の休憩が認められます。

レベル5で一時中止

レベル5に達した場合には、外コートでの試合は一時中止(サスペンド)となります。ただし、偶数ゲームの終わり、またはタイブレークの終わりの時点までを終了してからストップします。

開閉式屋根のある、3つのスタジアムでは、屋根を閉めることができます。

これまでのエクストリーム・ヒート・ポリシーとは

1998年から全豪オープンで採用されていた熱中症対策・「エクストリーム・ヒート・ポリシー」は、いろいろと変更されてきた歴史がありますが、前回の2018年大会でエクストリーム・ヒートと判断される条件は、

  • 気温が40℃以上
  • WBGTが32.5℃以上

でした。この場合、外コートでは試合を止める、開閉式屋根付きスタジアムでは屋根を閉じる、という措置が取られます。

2018年はとても暑くて、フェデラー選手やジョコビッチ選手を始め多くの選手から、そして多くの観客からも見直すべきとの声が上がりました。

日本体育協会の指針では、WBGT31℃で原則運動禁止、28℃以上で激しい運動は中止です。

今回何が変わった?

全豪オープンの熱中症対策は、役に立ってないと批判されてきました。昨年2018年にも、多くの選手が熱さに苦しみ、中でもジョコビッチ選手とモンフィス選手の試合では両者ともふらふらで特にモンフィス選手は立っていられないほどの状況だったにもかかわらず、基準に達しないということで、休憩も試合の一時中断も何の対策もなく、世界から批判されました。

というわけで、何が変わったかというと、

  • 基準を気温とWBGTからHSSに変えた
  • 気象要因を計測する場所が会場内の5か所となった
  • 熱人間工学も判断材料に加えた
  • 男子シングルスにも休憩が認められるようになった

新基準が実際に機能するかどうかは、実施されてみないとわからないところですが、新基準でも先に述べたジョコビッチvsモンフィス戦の状況はレベル4に達しないということです。

ジョコビッチvsモンフィス戦では、公式に発表されていた気温は39度台だったそうですが、夏の日差しが照り付けるコートでテニスをする選手には実際の体感は70度にも達するほどだったと言われています。

しかしこれまで考慮されていた気象庁の気温は、日陰の気温だったと指摘されていますから、今回、もしかすると外環境要因の計測場所が会場内の5か所になったことで、結果が変わるかもしれません。

また、選手の発汗量や深部体温などの人体の内環境から見た熱ストレスの実際のデータに、これまでよりウェイトをおいた基準ということですから、それが選手の現実により寄り添ったものとなっているのかも期待されます。

感想

日本の夏も厳しい暑さで、日本人にとって暑さ指数は日ごろから耳にするなじみのある言葉です。日本の夏は、熱いのと同時に湿度が高く、べたべたですが、先日実際にメルボルンの夏を訪れたところ、乾燥がすごい。

日差しが痛くてぼーっと暑い。34~37度くらいでしたが、例えてみれば、風が出るタイプのファンヒーターの風みたいな暑さでした。汗が出てるとは思うのですが、皮膚上にとどまらずに蒸発していってる感じでしたよ。WBGTの湿球は、ガーゼを巻き付けて測るみたいですから、それって皮膚上に汗がとどまっている感じですよね。もしかすると素焼きのツボみたいにそれでも中の温度は低くなるのかもしれませんが、体感としては、汗かいて涼しくなったなんて全く感じませんでしたね。とにかくぼーっと暑い(笑)。で日向に出ると日差しが痛い。刺してくる。そんなところで激しい運動をするテニス選手はほんとうにすごい体力です。観戦の皆さんも水分補給をお忘れなく。会場内には飲み水を汲める場所がたくさん設けられていますから、ボトルや水筒を持っていると便利です。

全豪オープンの会場メルボルンパークに行ってみた
...